コミュニティ・マネージャーの役割や平均年収と必要なスキル

SNSが人々の生活に浸透した現在、「コミュニティ・マネージャー ( Community Manager ) 」という職業に注目が集まっています。

コミュニティマネージャーという用語は目新しいものではなく、検索トレンドで見ても2004年から一定数の検索量はありました。これは、コミュニティを社会的な共同体としてマネジメントすることを目的に検索されていたと思われます。

これに対し、企業において事業利益に関するコミュニティの醸成を目的とする「Community Manager」が、FacebookなどのSNS活用が盛んになる2010年頃を機に検索数に加わることで伸び始め、現在でもその勢いは止まりません。同様な意味で使われる「Social Media Manager」の検索推移と比べても、同じような伸びを見せています。ここでは、この事業利益を目的としたコミュニティマネージャーについて解説します。

コミュニティ・マネージャーの役割

コミュニティマネージャーは、オンライン、特にSNSを中心にコミュニティを形成し、育成のためのマネジメントをします。具体的には、以下のような活動を行います。

  1. 顧客とつながる「場」をつくる
    主にはSNSとされていますが、オフラインイベントも含めた場を作ります。SNSという既存のネットワークの中で、対象となる商品やサービス (便宜的に「ブランド」と呼びます) を認知させる事も場づくりの1つです。
  2. エヴァンジェリストを見つけ (育て) 、つながりを強化する
    コアなファンはそのブランドについて情報を発信してくれる「エヴァンジェリスト」となります。新たなファンの創出にも貢献するエヴァンジェリストとの関係性を深めていきます。
  3. 顧客の声を聞き、答える
    顧客の声を素早く収集するには、SNSは最も適したメディアです。とくにポジティブな内容よりも、アンケートでは収集することのできない細やかな疑問や不安を取り除くためのコミュニケーションを行います。
  4. 関連性の高い他ブランドとのコラボレーションを図る
    1つのブランドでは、アイデアやプロモーションの幅が限られます。ロイヤルティの関連性が高い他企業のブランドとコラボレーションすることで、イノベーティブなアイデアやキャンペーンを通じて、新たな顧客を創造することができます。
  5. 顧客と一緒にサービスをつくる
    熱狂的なファンであればあるほど、アイデアに対価を求めず参加意欲が高くなるだけでなく、当事者では気づかない価値を思いつきます。このようなファンの声を拾い上げ、サービスに反映させていくきっかけをつくります。

このような活動を通じて、最終的には「コミュニティ参加者のロイヤルティを向上させる」のが、コミュニティマネージャーの役割です。一般的なプロモーションは「いかに売るか?」を目的に顧客視点を持ちますが、コミュニティマネージャーはブランドの主体でありながら、「顧客そのもの」であり「顧客の頂点」であることが大切となります。

コミュニティ・マネージャーの年収

世界最大手のIndeedのデータによると (2020年5月現在) 、「Community Manager」の米国での平均年収は540万円程度 ($50,446) となっています。

(引用:indeed.com)

Digital Marketer」を基準とした場合、Digital Marketerの平均年収は650万円程度 ($61,356) であり、若干下回っているようです。

(引用:indeed.com)

しかし、ヒストグラムの型でみた場合、「Digital Marketer」は年収の高い求人の影響を受けている可能性があり、「Community Manager」はそれよりも安定的に高い年収であるようにも見えます。

コミュニティマネージャーの必要性が高まる中、事業成果にさらに連動するとの認識が高まれば、さらに価値は高まるものと思われます。

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コミュニティ・マネージャーとして知っておきたい用語

1. パブリックナラティブ

パブリックナラティブ」とは、ハーバード・ケネディスクール公共政策の上級講師であるマーシャル・ガンツ博士が提唱するストーリーテリングの新たな型のことであり、「コミュニティオーガナイジング」のアクションの1つでもあります。

これまでのストーリーテリングは、ブランド側が顧客に寄り添いながらも「一方的に」物語を伝えるものだったのに対し、パブリックナラティブは、相手の価値観や経験に対して「共感を得る自身の物語 = Story of Self」を通じて「コミュニティの一体感を創出 = Story of Us」し、「今何をするべきか? = Story of Now」を共につくります。

この手法は、2008年の米国大統領選挙において、資金力や大きな支持基盤がなかったバラク・オバマ氏を初の非白人大統領へと導いた手法として注目されました。

本来は、ソーシャルビジネスにおけるコミュニティリーダー論のほうが当てはまるものですが、今後より社会性が問われる資本主義経済下の企業においても、このパブリックナラティブな価値観が、コミュニティマネージャーには問われることでしょう。

2. スモールマス

SNSにおけるコミュニティ形成と言われた場合、大企業における広報アカウントをイメージされる方も少なくないでしょう。しかし、中小企業であってもブランドを世に認知させ、ファンを増やすための活動をしなければいけません。

多額な広告をかけられるわけではない状況では、より「ファンとなる顧客層」の価値観やニーズを深く理解し、それに答えるためのブランドのあり方と発信が必要となります。

この「一定規模見込まれるコアなファンを軸に一般 (マス) にブランドを拡げる」事を、「スモールマス」と言います。

スモールマスは、一般的なターゲティング戦略よりも、より深いニーズの深堀りからブランド戦略を策定する手法です。

コミュニティマネージャーとしてファンの細やかな声を拾い上げ、直接的なコミュニケーションも活用しながら、サービスの向上とファン化につなげていきましょう。


日々新たなSNSが生まれ、年代ごとに活用される傾向も変化していますが、コミュニティマネージャーにとって重要なのは「自ら顧客の代表としてコミュニティを育成していく」ことです。時代の流れをうまく読みながらも、顧客の中に自ら入り、ファンの育成に努めていけるスキルが必要となります。

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