デジタル・ストラテジストの役割や平均年収と必要なスキル

インターネットはすでに現世界に溶け込んで一体化しています。リアルとネットをを分けて考える時代は終わっています。

そしてそれは、あらゆる顧客体験に対して、デジタルを軸としたコニュニケーション戦略が必要とされています。それがDX ( Digital eXperience : デジタル体験 ) であり、その時に中心となる人材が、「デジタル・ストラテジスト」です。

デジタル・ストラテジストに対する需要

デジタル・ストラテジストは、後述する「デジタル・トランスフォーメーション」の推進が活発になった近年で需要が高まっている印象がありますが、2006年頃より一定数の検索規模を持っています。

トレンドとしては、「Digital Marketer」とほぼ同水準で推移していました。2015年頃から大きく差が開いていますが、ニーズとしては下がる事なく推移しています。

インターネットの普及と併せて、消費者中心のマーケティングへのシフトは古くから提唱されていました。かつ、あらゆる接点(コンタクトポイント)を統合して最適化しようという統合型のマーケティング戦略に対するニーズもあり、デジタル・ストラテジストが求められてきたと言えます。

デジタル・ストラテジストに必要なスキル

デジタル・ストラテジストには、下記のようなスキルが必要とされています。

  1. 経営戦略立案スキル
    デジタル戦略は、単なるコミュニケーション設計やプロモーション立案ではありません。現在の事業を、いかにデジタルを軸に変革を推進できるか?が重要となります。そのためには、事業そのものの戦略を立案できるスキルが必要となります。
  2. データ解析スキル
    戦略立案と事業運営に、データの活用は必須となります。目指すべき方向性と達成すべきKGI・KPIなどをデータから定量化し、またその裏側にある顧客を指向読み解くために、データ解析スキルが必要です。
  3. 事業推進スキル
    事業の変革には、多くの関係者の協力が必要となります。そのためには、ロジカルかつシンプルにやるべきことを提案でき、丁寧なコミュニケーションをもって関係者を巻き込んでいくスキルが必要となります。

これらのスキルは非常に高度な能力です。長年の経験が必要のようにも思えますが、これから「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる世代が社会に輩出されてくことで、必要な経験値はさらに変化していくものと思われます。

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デジタル・ストラテジストの年収

世界最大手のIndeedのデータによると (2020年7月現在) 、「Digital Strategist」の米国での平均年収は690万円程度 ($64,846) となっています。

(引用:Indeed)

「Digital Marketer」の平均年収が$61,145ですので、デジタルマーケティング職の中でも高い平均値となっています。

デジタルストラテジストとして知っておきたい用語

デジタル・トランスフォーメーション

デジタル・トランスフォーメーション」(Digital Transformation:以下、DX)は、企業がテクノロジーを利用することで、これまでの事業に大きな変革をもたらすことを目的としています。デジタルシフトも同義語となります。

現在、DXが必要とされる背景には、多くの市場において、既存の業態のあり方を破壊する新規参入者が登場してきたことにあります。そのために、既存企業においても破壊的な変革が求められています。

DXにおいて、既存システムをクラウド化する、またはRPA化するといった行動は各論でしかありません。最も重要なのは、「破壊的な新規参入者に対抗できるビジネスモデルを構築する」ことにあります。

(引用:DXとは何か

このようにDXは、市場をデジタルを軸に新たに定義することによって、変革を成功へと導きます。

統合マーケティングコミュニケーション

統合マーケティング・コミュニケーション」(Integrated Marketing Communication:以下IMC)は、外部環境や消費者データから統合的なメッセージでブランドを管理する手法です。

「IMCの父」と呼ばれる、ノースウエスタン大学のドン・シュルツ教授によれば、IMCを「消費者から出発し、あらゆる手法を駆使して、説得力あるコミュニケーションを実践するプロセスである」と定義づけしています。

IMCは、広告などのクリエイティブを統合することが目的ではなく、ブランドの投資対効果(Return On Investment:以下、ROI)を最大化することにあります。そのために、全てのコンタクトポイントにおけるブランドメッセージを統合して管理することが必要となります。

IMCにおいてその時に最も重要なのは、消費者から出発するという点です。

消費者データベースを構築し、セグメンテーションを通じてそれぞれの顧客体験を最大化するメッセージづくりとROIの管理を行っていきます。デジタルは、これらの分析・体制づくり・ROI管理を最適化することに最も適しています。


IMCの概念は1990年代初頭からありますが、近年のDX推進の流れから見直される理論です。デジタル・ストラテジストとしても、新旧の理論をうまく取り入れながら、事業の変革に努めていきましょう。

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