「アフィリエイトマーケティング」という用語を耳にした時、「個人が収益をあげるためのもので企業には関係ない」「質の低いコンテンツで検索エンジンから評価されなくなっている」というようなイメージを持つ方も少なくないのではないでしょうか。
確かにそのような側面で語られることも多いアフィリエイトマーケティングですが、昨今は非常に透明性が高く、メディアとしての価値が高いアフィリエイトパートナーが存在します。そして、対象とする事業領域におけるそのようなパートナーをマネジメントするのが、「アフィリエイトマネージャー」です。
アフィリエイト・マネージャーの役割
前述のように、日本国内ではGoogleの検索アップデートの影響から、以前の勢いを失っているようにも感じる「Affiliate」ですが、Google トレンドでは一定規模の市場を持って推移し、ここ数年ではさらに回復傾向のようです。※この検索規模は、アフィリエイトパートナー側の需要と考えています。
同様なニーズとして検討される事も多く、海外ではアフィリエイトよりも主流と言われる事もある「Dropshipping」と比較しても、差は縮まりつつあるものの、以前倍以上の検索規模を持っています。
矢野経済研究所の調査においても、毎年約10%の伸び率で成長を続けているようです。
これは、パートナー増加という面の拡大ということでなく、「より対象事業にとって良質な顧客獲得に向けたパートナーシップ」をミッションとするアフィリエイトマネージャーと、透明性をもってメディア運営にあたるアフィリエイトパートナーとの関係性への価値が向上していることが考えられます。
このような現状から、アフィリエイトマネージャーは、アフィリエイトを単純な広告面と考えるのではなく、事業の良き理解者としてパートナーへのアプローチを継続的に行って必要があります。
アフィリエイト・マネージャーの年収
世界最大手のIndeedのデータによると (2020年7月現在) 、「Affiliate Marketing Manager」の米国での平均年収は660万円程度 ($61,660) となっています。

「Digital Marketer」は同時期調査で「$61,027」となっているため、デジタルマーケティング職と同等の市場価値と思われます。
アフィリエイト・マネージャーに必要なスキル
SNSも含めた優秀なパートナーを探す
アフィリエイト担当になった際、これまでは広告代理店にメディイア開拓と運用を任せ、定量的な効果測定だけを行っているケースも多く見られました。
しかし、メディアとして良質なクオリティを持って運用する事ができるパートナーは非常に限られます。広告代理店任せの運用では、この優秀なパートナーは競合他社との関係性を強化していってしまいます。
優秀なパートナーは、その領域に深い知見を持ち、SNSでもそれらを有効に発信して集客を行っています。アフィリエイトマネージャーとしても、検索だけでなくSNSなども通じて、パートナー獲得に当たる必要があります。
EPCを最適化しサービスの体験価値をあげる
「EPC」とは、Earn Per Clickの略で、「広告1クリックあたりの収益」のことです。アフィリエイトパートナーは、対象となる事業や広告クリエイティブに対し、その広告プログラムを選ぶ際の指標として活用しています。
EPCは、次の計算式によって求められます。
EPC = アフィリエイト報酬金額 ÷ 広告クリック数
EPCが大きいほど、パートナーにとって有益な広告となります。そのため、競合他社とのEPCを比較しながら、最適化していく必要があります。
その際、単純に「コンバージョン率」や「報酬額」を上げればよいというわけではありません。EPCはあくまでアフィリエイトパートナーにとっての基準でしかなく、実際に商品やサービスを利用するのはエンドユーザーになります。
その後の体験も含め、体験価値をあげ、クチコミなどの形で信頼性が向上することで、EPCも結果として向上します。
もちろん、コンバージョンポイントの見直しなども重要となりますが、それも体験価値と連動して考える必要があります。
パートナーとのリレーションを大切にする
昨今は、誰でも条件を満たせば参画できる「オープンASP (Affiliate Service Provider)」よりも、パートナーと直接対話をしながらコンテンツや成果について両者で締結することを前提とした「クローズドASP」が大きな成果を挙げています。
成果報酬体型も、優秀なメディアに至っては、コンバージョンではなくインプレッション課金となるケースも見受けられます。
このようなメディアとの関係性を維持する活動は、広報部門におけるメディアとの関係構築にも通じると言えるでしょう。アフィリエイトマネージャーには、今後さらにそのようなスキルが必要となります。
アフィリエイトマネージャーの仕事は、既に広報部門と同様のミッションを持っています。むしろ、パートナーを通じた透明性や客観性のあるコンテンツを通じて、顧客獲得という直接的な成果を求められる重要なポジションとなります。
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寺岡 幸二 (著)