キャリア・アンカーとは?8つの分類でキャリアをイメージする

キャリア・アンカー」とは、社会人が自らのキャリアを構築していく上で、どうしても犠牲にしたくない最も大切かつ不動な価値観のことを言います。

アメリカの組織心理学者であり、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授であるエドガー・ヘンリー・シャインによって提唱されました。シャインは組織開発の研究において個人のキャリアに注目し研究を開始し、キャリア・アンカーとう理論を構築します。そこから「キャリア・サバイバル」や「キャリア・コーン」などの開発にもつながっていきますが、今回はキャリア・アンカーについて触れていきます。

キャリア・アンカーが生まれるまで

シャインがキャリア・アンカーを研究しはじめたきっかけは、MITの卒業生に「会社に対する価値観」を調査した結果になります。卒業間際の学生におこなったキャリア意識を調査した1年後、実際の状況が大きく異なっていたことに、シャインは衝撃を受けました。

そこから長年の研究を経て「仕事や生活の実体験からキャリアに対する自己意識が形成される」ことに気づいたようです。

  • 何をしてきたか?
  • なぜそれをしたのか?

といった質問からキャリアの変遷について調査から、いくつかの変遷を経て、個人が持つキャリアイメージを8つの分類へと導いていきます。それが、キャリア・アンカーとなります。

キャリア・アンカー 8つの分類

キャリア・アンカーは定められた診断項目から、自身のキャリア観において下記の8つの分類がどれくらいを占めているか?を明らかにします。

キャリア・アンカーの8つの分類
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1. 専門・職能別コンピタンス (TF : Technical/Functional Competence)

ある特定の専門分野・職能スキルを活かし、常に高いスキルを維持・向上しします。

2. 全般管理コンピタンス (GM : General Managerial Competence)

組織の中で高い地位につき、組織マネジメントや経営管理を行うことで責任をもちます。

3. 起業家的創造性 (EC : Entrepreneurial Creativity)

リスクを負い障害や失敗を乗り越えながらも、新しい組織や企業を創造していきます。

4. 保障・安定 (SE : Security/Stability)

 雇用への保障や勤続と報酬、安定したキャリアを望み、組織上の地位にはあまり関心を持ちません。

5. 自立・独立 (AU : Auutonomy/Independence)

自分のやりたいことを好きなペースでやりたいため、組織よりもフリーランスや自営で活動します。

6. 奉仕・社会貢献 (SV : Service/Dedication to a Course)

社会貢献や課題解決により、世の中をよくすることに価値を感じます。

7. 純粋な挑戦 (CH : Pure Challenge)

解決不可能な問題を解決し、高いハードルを超えることを望みます。

8. ライフスタイル (LS : Lifestyle)

個人・家族・キャリアの要求バランスをとり、人生全体について考えます。

キャリア観は、これらのどれか1つに当てはまるものではありません。特に社会人経験が十分でない場合は、いくつかの分類があてはまるケースも見受けられます。その場合は、無理にカテゴリにあてはめるのではなく、より長いスパンでキャリアを想像してみた際に、どちらが重要であるか?を意識してみると良いでしょう。

診断方法

キャリア・アンカーの診断項目は様々なWebサイトでも公開されており、検索すれば無料で診断できるサイトも見つかります。しかしシャインは、対面でのインタビュー形式による診断を推奨しています。

理由としては、Webサイトや質問表による自己診断では、どの分類も同じような割合になることが多く正しい結果が得られないからです。実際に各種Webサイトで診断してみると、あらゆる分類に差異がないことに気づくでしょう。

キャリア・アンカーは、キャリア・コンサルタントやキャリア・カウンセラーによる診断によって行うことがベストです。

マーケターにとってのキャリア・アンカー

マーケターは、特定の分野に強く専門職的思考と、関係者を取りまとめる管理思考、PL管理に見られる経営的思考が求められる職種です。加えて、その個人の人生観によっては、ワークライフバランスや保障を重視する傾向もあるでしょう。

広い専門性とコミュニケーション力が求められる職種だからこそ、マーケティングに携わると、キャリアについて考える機会が少なかったり、その時の状況に偏ったキャリア観になることが多くみられます。(逆に言えばそれがアンカーとなっていくとも言えますが)


デジタルマーケティングがすべてのフィールドに浸透し、もはやマーケティングそのものとなりつつある今、業務知識もマネジメント範囲も拡がってきています。そのような状況下で、「自分はマーケティングを通じてどうなりたいか?」をイメージするためにも、キャリア・アンカーを一度知っておくと良いでしょう。

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