ソーシャルスタイル理論〜コミュニケーションタイプを理解する

マーケティング活動は、それらが対象とする領域だけでなく、関係する部門や顧客、パートナーも多岐にわたります。各関係者との折衝を円滑に行うには、「コミュニケーションスキル」も必要な要素の1つとされますが、相手によってコミュニケーションがうまく機能できないこともあるかと思います。

その時に知っておきたい理論が、「ソーシャルスタイル理論」です。

ソーシャルスタイル理論とは

ソーシャルスタイル理論とは、米国の産業心理学者であるデイビット・メリル氏とロジャー・レイド氏が1960年代に提唱した、ビジネスコミュニケーションを効果的におこなうために用いられる理論です。

この理論では、人の思考やコミュニケーションには大きく4つの傾向=ソーシャルスタイルに分類されます。自分やチームのメンバーがどのグループに属するか?を理解することで、相手の特性を知り、円滑かつ効果的なコミュニケーションを行うために用いられるようになりました。

まずは、下記の図を参考に、4つのスタイルについて知りましょう。横軸に「自己主張」、縦軸に「感情表現」を取ることでできる四象限が、それぞれのスタイルになります。

ソーシャルスタイル理論

1.ドライバー

自己主張が強く感情表現が弱いエリアが、「ドライバー」になります。目標を達成するために、合理的かつビジネスライクに物事をすすめるタイプです。

目標さえ与えられれば、その達成へのプロセスを自ら判断して行動できるため、経営層やマネジメント層などに多く見られるタイプでもあります。

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2.エクスプレッシブ

自己主張が強く感情表現も強いエリアが、「エクスプレッシブ」になります。ドライバー同様、リーダーシップを発揮することに優れますが、感情豊かな面からノリがよく、ムードメーカーとしての役割を果たす傾向があります。

ルールにこだわらずに周りを巻き込んでいくのが得意なタイプです。

3.アナリティカル

自己主張が弱く感情表現も弱いエリアが、「アナリティカル」になります。客観的に物事を捉え、独自の価値観で分析・判断を行います。

より正確な情報やデータを重視し、周りに流されにくい傾向にあります。

4.エミアブル

自己表現が弱く感情表現が強いエリアが、「エミアブル」になります。相手の話に耳を傾け、相手の為に行動を取ろうとするタイプです。

穏やかな雰囲気で縁の下の力持ちとして行動することを得意とし、チームの調和を保とうとする傾向にあります。

判定と活用方法

自分がどのエリアに属するかは、十数問の質問に答えるだけでも判定することができます。ソーシャルスタイル理論の良さは、質問数が多くなく、それでも理論としては納得感がある点です。

そして、自分だけでなくプロジェクトメンバーなどと一緒に判定することで、その後のコミュニケーションのあり方を考えることができる点にあります。

  • ドライバーは、多くの手助けを必要とせず、成果に対する奨励を行うことがよい
  • エクスプレッシブは、とにかく褒める事で、モチベーションを維持できる
  • アナリティカルには、指示だけでなく、褒める時でもより具体的な言葉で説明するとよい
  • エミアブルには感謝の気持ちを伝え続ける

など。自分のスタイルを知り、活かしつつ、相手のスタイルも尊重するのが良いコミュニケーションの基本です。

【補足】ソーシャルスタイルとスキルマップ

本来はその人の交流スタイルを示す理論ですが、これを「マーケターとしての素養」にも活かせるのではないか?という考えから、「マーケティングスキルマップ」は構成されています。

戦略を練りつつ、パートナーの協力を得ながら目標を達成するエリア。固定概念を持たずに豊かな表現力を活かすエリア。客観的なデータ分析に優れたエリア。要望に対し制作・開発スキルを発揮するエリア。それぞれの素養が活かしやすい形で分類することで、スキルマップをまとめることができました。

注意が必要なのは、属するスタイルと身につけるべきスキルが必ずしも合致するとは考えてはいません。あくまでスキルのマッピングのベースとして、ソーシャルスタイル理論を利用したものと理解してください。

エリアをまたいでの経験を積むこともありますし、それらが無駄になるわけではありません。自分のスキルマップをどう埋めるか?は、自分の意思もありますが、その時に置かれた環境にも依存することはあると思います。

また、自分が望むキャリアがマネジメントかスペシャリストか、起業家かワークライフバランスかでも、取るべき行動は変わってきます。

これまでの実績をスキルマップに落としこみ、ソーシャルスタイルを掛け合わせたうえで、これまでの棚卸しと望むキャリアへの次の一歩を決定していく手助けができると考えているのです。

マーケターこそ、自分を知る機会を大切にしよう。

マーケターは、ターゲットの状況を読み取ることにスキルを発揮する職業です。逆にそのためか、自分を知る機会があまりないと感じることも多くあります。ソーシャルスタイル理論をただのコミュニケーションの効率化の手段としてだけでなく、マーケターとしての自分を知る機会としてもぜひご活用ください。

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