ハイプ・サイクルからMarTechの潮流を先読みする方法

  • 2020年6月14日
  • 2023年4月1日
  • DX

マーケティングテクノロジーは、アドテクノロジーに限った話ではありません。エンドユーザーが利用するテクノロジーの全てに、マーケティングとの関わりがあります。

テクノロジーは、サービス体験そのもののあり方を変革する力を持っています。ただしそのために必要な技術を取り入れ改善するには、MarTechの潮流を追いかけるのではなく「先読み」する力も必要です。

マーケターとしてテクノロジーの期待度や浸透度を知る手段として「ハイプ・サイクル」があります。ハイプ・サイクルとは何か?と併せて、現在の動向を知りましょう。

ハイプ・サイクルとは?

ハイプ・サイクルとは、米国のITリサーチ企業であるガートナー社が提唱する、注目度の高い技術の状況を示す曲線の事を言います。

ハイプ・サイクル(引用:Wikipedia

ガートナー社は、1995年に最初のハイプ・サイクルを発表して以降、年に一度の更新を続けています。

ハイプ」とはメディアによる「誇張」を意味します。ハイプ・サイクルは、メディアによる過度な期待から話題性の終焉を経て、安定期までの流れを知ることができるものです。

あくまで「話題性」がグラフ化されたものであり、技術的な進化や衰退を示すものではない点に注意してください。

ハイプ・サイクルの段階

ハイプ・サイクルには、5つの段階が存在します。

AD

1. 黎明期 (技術の引き金:Innovation Trigger)

ハイプ・サイクルの最初の段階です。新しい技術として発表され、報道などを通じて関心が高まる時期です。

2. 流行期 (過剰期待の頂:Peak of Inflated Expectations)

世間の注目が大きくなり、過度の興奮や期待となる時期です。”「過度な期待」のピーク期“とも表現されます。多くのメディアで連日その技術が取り上げられるようになります。

3. 幻滅期(幻滅のくぼ地:Trough of Disillusionment)

メディアにおける関心が減少し、話題として取り上げられなくなる時期です。前述のとおり、あくまでメディアの話題性としてのくぼ地であり、技術的な終焉を意味するわけではありません。

4. 回復期(啓蒙の坂、Slope of Enlightenment)

メディアが対象の技術を取り上げることがなくなる一方で、技術に対する利点や適用する方法が理解されるようになります。

5. 安定期(生産性の台地、Plateau of Productivity)

技術が徐々に安定して導入されるようになり、第二世代、第三世代へと進化する時期です。

ハイプ・サイクルは、特定の技術に対して現在の話題性を測るために見るよりも、様々な技術のトレンドや実用化の時期をウォッチし続けることに意味があります。

ある技術は流行期に話題となるものの、幻滅期には消滅することもあります。そして、同じような概念でありながら別の名称や技術として黎明期に現れるものもあります。また、幻滅期に入った技術は、話題にはならないものの、実用化の機会が訪れ始めていることにもなります。

このように、テクノロジーの変遷を俯瞰的に読み取り、事業や商材へと取り込んでいくことが重要となります。

2019年度におけるテクノロジーのハイプ・サイクル

2019年8月30日、ガートナー社が最新テクノロジのハイプ・サイクルを発表しました

先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年 (引用:ガートナー ジャパン)

5G元年と言われる2020年ですが、その「5G」が流行期としてピークを迎えています。IoTなどから収集されるビッグデータをリアルタイムに解析・予測・意思決定する「エッジ・アナリティクス」も、同様に流行期のピークに向かおうとしています。

併せて、2018年度のハイプ・サイクルと比較してみましょう。

先進テクノロジのハイプ・サイクル:2018年 (引用:ガートナー ジャパン)

5Gは2018年度は黎明期にカテゴライズされていました。5G元年と呼ばれるにふさわしく、現在がまさにピークへと変化しています。

一方、エッジ・アナリティクスは2018年度のハイプ・サイクルには、その名称すら存在しません。これについて、ガートナー者のプレスリリースでは以下のような記述があります。

2019年版の「先進テクノロジのハイプ・サイクル」では方針を見直し、過去の同ハイプ・サイクルでは取り上げていなかった最新テクノロジを紹介することに注力しました。このため、2018年版に掲載されたテクノロジのほとんどが2019年版では除外されていますが、そうしたテクノロジが引き続き重要であることに変わりはありません。

ガートナー ジャパン

いくつか解釈のしかたはありますが、エッジ・アナリティクスは、隣接する「AI PaaS」と併せて「高度なAI/アナリティクス」として、5つの先進テクノロジ・トレンドとして取り上げられています。いずれにせよ、今後のアナリティクス市場が注目を浴びていることは間違いありません。

2019年度におけるCRMのハイプ・サイクル

ガートナー社は、テクノロジだけでなくCRMについても、ハイプ・サイクルを発表しています

日本におけるCRMのハイプ・サイクル:2019年 (引用:ガートナー ジャパン)

今後、顧客視点でデジタル体験を最適化するマーケティング手法として注目され始めている「デジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム」は黎明期として取り上げられています。現在の市場と併せて、同様に黎明期に並ぶ技術に着目することも、今後のMarTechトレンドを先読みすることに貢献するでしょう。


MarTechは、新しい技術ほど「PoC (Proof of Concept:概念実証)」と呼ばれる実用性の検証も必要であり、そのための投資は大きくなります。

しかし冒頭で述べたとおり、サービス体験のあり方をいち早く変革し、顧客ロイヤルティを高めることは、強力な差別化要因となります。

そのためにも、マーケターにとってハイプ・サイクルから事業にあった技術をウォッチし、実用時期を見極めることはとても有益であると言えるでしょう。