LMSとは?市場規模や求められる機能と活用のメリット・デメリット

新型コロナウィルスがこれまでの生活様式を一変させた一方で、これまで遅れていた日本国内のデジタル活用が急速に進んだのも事実です。

打ち合わせや商談、セミナーなどがオンライン化されただけでなく、人材育成の面でもeラーニング市場が拡大傾向にあります。2021年度の国内eラーニング市場は、前年度比13.4%の増加となっています。(矢野経済研究所調べ)

LMSとは?

LMSは、Learning Management Systemの略称であり、そのまま翻訳すれば「学習管理システム」の事を言います。国内では「eラーニング」というワードの方が一般的ではありますが、LMSという市場は決して新しいものではなく、検索推移を見ても一定の市場規模を維持しており、ここ数年穏やかに上昇傾向でもあります。

2017年頃にバズワードとなった「Edtech」と比べても、LMSの方が検索ボリュームは高いようです。

e-ラーニング市場規模の推移を見ると、2018年度には2,185億円でしたが、2022年度には3,655億超と、67%も増加しています。

LMSの機能とシステム

LMSは主に下記の機能を有しています。

  • 動画による講座配信機能
  • 理解力を確認するテスト機能
  • 受講者同士によるディスカッション機能
  • 資料の保存・検索機能

特に大規模なオンライン公開授業においては「MOOC(Massive open online course)」と呼ばれ、その日本版として「JMOOC」が複数サービスを束ねる形で展開されています。

JMOOC 公式サイト

LMSは、専用のコンテンツ管理システムがすでにオープンソースで提供されている為、コンテンツさえ用意できれば提供する事はさほど難しいものではなくなりました。

その代表格として「Moodle」があります。

Moodle 公式サイト

Moodleは、2001年に公開されたオープンソースのLMSです。230もの国々、1億4千万人を超える受講者が利用しています。日本においても様々な大学がMoodleでオンライン講座が提供されています。

オープンソースであるため、自身が管理するサーバーでの運用も可能です。

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LMSを活用するメリット・デメリット

LMSを活用するメリットは、大まかに言うと下記のようになります。

  • 場所と時間に制限なく、講座を受講することができる
  • 基礎学習だけでなく課題やフォーラムを活用する事で、一方的な学習や指導にとどまらない環境が用意できる
  • 生徒同士も疑問や解決策を共有し合う事で、つまづきやすいポイントの理解と知識の共有ができる

特に、時間と場所の制約に対するメリットは、これまでの講座展開の課題を大きく前進させるものと感じています。

一方、これらの要素が「反転学習」と呼ばれる学習方法と同様であり、反転学習のデメリットでも上げられる

  • 事前学習の時間の有無が、その後の講座の進捗に大きく影響を与える
  • 受講のタイミングや課題となるポイントが個々で異なる為、理解力の平準化が難しい

といった点に注意が必要です。

個人的には、現在のLMSの機能とコンテンツ面での改善の他に、チャットボット等の活用による事前学習のサポート体制の自動化は必須ではないかと考えています。

実際に海外では、とある大学が学生に対してチャットボットでのサポートを行うことで、退学率を大幅に減少させることができた、というレポートが公開されています。

アクセス状況や理解度判定をデータとして分析し、適切なサポートを可視化・自動化していく事で、これらの環境を改善が見込まれるものと思われます。

LMSの持つポテンシャルと今後の期待

人生100年時代で長く活躍し続けるためには、新しい分野や技術に対するリスキリング(学び直し)が必須となりました。そしてリスキリングにあたり、大学などの教育機関以外でもLMSを活用することは避けられないと思われます。

学歴から学習履歴が重要視される傾向が強まる中、LMSにおける技能習得の証明として、「デジタルバッチ」の普及と活用が進んでいます。

デジタルバッチとはIMS技術標準の1つであり、学びの履歴を世界共通で証明することができます。これは、LMSが何らか学びを得るためのプラットフォームとどまらず、自身のスキルとキャリアを証明するためのプラットフォームへとなっていくことを示しています。

現在でも様々なLMSが提供されている中、それらを横断してスキルを証明できる仕組みは非常に重要なものと言えるでしょう。LMSを現在の機能面だけでなく、キャリアデザインのプラットフォームとして捉えることが重要です。