セルフ・キャリアドック

セルフ・キャリアドック制度とは?企業における今後のキャリア開発について

第四次産業革命と呼ばれて久しい昨今、企業にはDX(Digital Transformation)を始めとする、大きな変革が求められています。そのためには組織と併せて従業員自体のキャリア形成を促進していく必要にも迫られている状況です。

これに対し、企業が雇用する従業員に対して職業訓練などを計画に沿って実施した場合その経費や賃金の一部を助成する「キャリア形成促進助成金」が制定されており、この支給対象となる人材育成制度の一つに、「セルフ・キャリアドック制度」があります。

今回は、このセルフ・キャリアドック制度を企業が実施する有効性について考えてみましょう。

セルフ・キャリアドック制度とは

セルフ・キャリアドック制度とは、「企業が自社の人材育成ビジョン・方針に基づいて、従業員による主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み」のことです。

ここでいう「総合的」とは、有資格者によるキャリアコンサルティングのみではなく、キャリア研修などの組み合わせることで、複合的にキャリア形成支援を行う事を意味しています。

キャリアドック制度は、3年に3割が退職するという割れる新卒採用者の定着率向上や、•育児・介護休業者の職場復帰率向上、高年齢層社員の活性化につながるとされています。

この期待される効果の背景には、従業員自らによる主体的なキャリア形成という点が挙げられます。なぜ主体的なキャリア形成が必要かについては、下記記事をご参照ください。

しかしながら、企業側から見た場合、「従業員による主体的なキャリア形成」という点に、不安を抱くこともあるかと思います。実際、厚生労働省による「平成30年度 能力開発基本調査」では、過半数の企業が「人材育成をしても辞めてしまう」という回答をしています。

このような背景からか、企業は従業員主体よりも企業主体による人材育成を行う傾向があります。厚生労働省による「平成27~30年度能力開発基本調査」の企業調査結果では、正社員を対象とした場合で8割、正社員以外を対象とした場合で7割弱が、「企業主体」と回答しています。

それでは、対象となる従業員は、キャリア形成や企業での就業に関して、どのような意識でいるのでしょうか?

主体的なキャリア形成の効力

キャリア形成に関する責任主体について、先程の「平成27~30年度能力開発基本調査」の個人への調査結果でみると、正社員であれば7割程度は「自分で職業生活設計をしていきたい」と回答しています。

働き方改革や副業の推進などによって、「自分の職業人生設計を行う」という意識は今後ますます根強くなるものと考えられます。終身雇用が崩壊し、一企業でのキャリアパスを考える時代は終わったと言われる昨今において、従業員にはソの意識が高まっている中、企業側の意識は旧態依然とも言えそうな結果です。

そして、企業による「人材育成をしても辞めてしまう」という課題について検証してみましょう。

大和総研が、厚生労働省発表の「平成 28 年雇用動向調査」、「平成 29 年能力開発基本調査」 より作成した分析資料によると、様々な業種において、人材育成の実施と離職率には負の相関が見られます。

この負の相関とは、「人材育成を行うと離職率が下がる」という結果であり、企業が課題と考えているのは誤解であると言えそうです。

また、内閣府による「働き方・教育訓練等に 関する企業の意識調査(2018)」によれば、自己啓発支援制度が活用されている企業は、労働生産性に対する弾力性が高い傾向が見られます。

弾力性とは、生産性の伸び率を指します。つまり、自己啓発を支援する方が、企業の生産性向上につながるということです。

今後のキャリア開発の考え方

一時期、IT企業や大手メーカーを中心に「オープン・イノベーション」を促進することによる内部変革を行おうとする動きが強まりました。これは、既存の従業員だけでは変革ができず、外部の人材や知見との融合を図ろう資したものです。

しかし結果として、大きな成功を遂げた企業は多くありません。そしてほとんどの企業が、そういった取り組みに懐疑的になり沈静化していきました。結局、企業の変革には、既存の内部人材の成長が必要だということにも繋がる結果と言えます。

日本は、海外と比べて人的リソースは潤沢でありません。その中で変革を迫られる企業にとって、市場競争力の確保や永続的な発展の視点からも、個人主体によるキャリア開発は必然であり必要ではないでしょうか。

これらのことから、企業は従業員個人による主体的なキャリア形成を支援していくことは、非常に有効なことだと考えられます。