マーケティングプロフェッショナルの視点(日経BP)

  • 2019年6月15日
  • 2023年4月1日
  • 書評

今年1月に自身の会社を設立して以降も、とある企業のマーケティング部門でマネジメントを行っています。コンサルティングではなく何故マネジメントなのか?と言うと、マーケティングとは所属するメンバーが持つ個々のキャリアをチームビルディングして初めて機能すると考えているからです。

この考えが「マーケティングの本質」などと言うつもりでもなく、あくまで人材業界に長く関わらせていただけた上で、自分の軸となった事に起因しています。

キャリア・マネジメントにも触れたマーケティング書

本書の著者は、P&Gジャパンにおける長年のマーケティング経験を元に、名だたる企業でブランドマネジメントや組織開発に携われてきた、音部大輔氏。

表紙にある「明日から仕事がうまくいく24のヒント」というキャッチはありますが、マーケティング実務における解説書ではなく、どちらかと言うと概念やマインドを分かりやすい表現で説明してくれています。

マーケティングとは「市場創造」、ブランドとは「価値」、と言った具合に、表現が非常にシンプル。この概念を元としたケーススタディについては、インターネット上でも対談記事として公開されていたりします。

音部大輔氏が語る、マーケティングによる「市場創造」と「属性の順位転換」とは?
https://bizzine.jp/article/detail/2644

マーケティングのデジタル化により、其の実務が非常に複雑かつ高度なものに感じられる事も多々ありますが、高度なのは分析とアウトプットの整合性であり、考え方は逆によりシンプルであるべきなんだな、と思わせてくれる内容です。これからマーケティングを始める方にとってもオススメできる良書だと思います。

「1万時間の法則」に見られるマーケターのキャリア論

本書の中では、前述の通りマーケティング部門という組織の作り方や、マーケターとしてのキャリアについても触れられています。

その中で出てくる「1万時間の法則」を、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

これは、マルコム・グラッドウェル氏による著書「Outliers(邦題:天才!成功する人々の法則)」で書かれたものです。

分かりやすく言うと、「どの分野においても1万時間の練習で達人になれる」とされる法則であり、その後プリンストン大学で行われた研究によって信憑性が高められました。

「マーケティング」というスキルを漠然と捉えてしまうと、個々のキャリアも漠然としたものになります。より細かい「自分らしいスキルセット」をきちんと掘り下げないと、1万時間で得られるスキルが漠然としたものになる、ということです。

ドラクエを例としたKPIの考え方の記事においても、チーム編成を個々のスキルセットで表現しました。漠然と何でもこなしてきたディレクター集団と、個々のスキルセットが明確であるメンバーによるチームとでは、業務遂行能力が大きく変わってきます。そのために、1万時間を何に費やすか?が、マーケターのキャリアとしてとても大事ということです。

その上で本書にあるマーケティングの本質や目的を、それぞれのスキルを使って体現していく事が重要であると、改めて考えさせられる一冊です。